須賀しのぶ『夏空白花』(ポプラ社)

夏。終戦。そして,高校野球須賀しのぶ『夏空白花(なつぞら・はっか)』は,終戦直後,「全国中等野球大会」(後の高校野球)復活のために奔走する一記者の物語である。

話は昭和20年8月15日,玉音放送の場面から始まる。新聞記者の神住(かすみ)はビルの屋上で放送を聞いているうちに,ふと,十数年前,真夏の太陽の下で甲子園のマウンドに立っていた自分の姿が脳裏によみがえった・・・。

この小説はフィクションである。フィクションであるが,このような話,実際にあったんだろうな,と思わせる。この小説の登場人物たちと同じように,高校野球復活のため,東奔西走した人たちがいたんだろう。それも終戦直後の大混乱の時期に,である。苦労が忍ばれる。

タイトルの意味も含め,読後感のよい小説である。あらためて,平和な時代に高校野球が開催されていることのありがたさを思う。

夏空白花

夏空白花

(ひ)