森バジル『探偵小石は恋しない』(小学館)

そろそろ僕らも無理はできない年齢に・・・。

---

今度はカジュアルで軽めの感じのミステリが読みたい――そう思って本書を選んだところ、予想を上回る大当たりだった。森バジル『探偵小石は恋しない』。

ミステリオタクの探偵・小石。もっとも事務所に来る相談事は、ほぼほぼ不倫や浮気調査。ところでこの小石、ある「能力」があって――。

全5章+プロローグ・エピローグで構成されるミステリである。主人公がミステリオタクということもあり、古典からごく最近のものまでの様々なミステリのタイトルが登場する。このブログで紹介したものもいくつか出てきた。こういうの、作品世界と現実世界とが地続きになっているようで、結構嬉しい。

内容はそれなりにガチンコのミステリだが、当方もミステリ読者歴ウン十年。ありとあらゆる可能性を想定しながら読み進める。やがて見えてくる「真実」。うん、まあ想定内だね。はは、楽勝楽勝、などと気を緩めた途端――。

・・・えええぇぇぇぇっ!? そ、そうだったの!?

油断したところでガツンとやられた。いやあ、それは想定外だぁ。すごいなこれ。

その後も次々と真相が明らかになり、その都度、前の方を読み返す。言われてみれば、あれもヒント、これもヒント。これなんか大ヒントじゃないか。

終盤も怒涛の展開。ミステリ好きにおなじみのあの作品が、まさかそんな使われ方を・・・(笑)。

ラストもすごく良かった。うまいなあ。


(ひ)