西村カリン『フランス人記者、日本の学校に驚く』(大和書房)

大先生による『吾妻鏡』の講評が楽しみです(圧力?)。

 

パリ五輪開幕。開会式はいろんな意味でフランスやなぁって感じであった。
(ちなみに、マリー・アントワネットの「首落ち」芸とか、あれだけ振り回しても消えなかったトーチは、日本産らしい。)

というわけで、フランス関係で何かと思ったので、これを。

西村カリン氏は、フリージャーナリスト。政府の記者会見では、記者クラブに属する本気で質問する気ゼロのサラリーマン記者たちに交じって、いたってまともな質問をしてくれていることは知っていた。
彼女の夫は漫画家のじゃんぽ~る西氏で、2人の子供の母である。

そんな彼女が日本の学校(コロナ禍を含む)について、単なる「出羽守」にならずに、フランスの学校との違い、そこからもたらされる市民教育のあり方、そして社会のあり方の違いにまで射程を広げ、簡潔に評論する。

いちばん印象に残ったのが「日本の学校では道徳を学び、フランスの学校では哲学を学ぶ」という対比であって、それは生徒としての発言、態度、授業の形、教室の姿、人間関係、すべてにおよび、そうして形成された「市民」が権力の前にどうふるまうか、その結果どのような社会が成立するか、という話にすんなりとつながっていく。

もちろんフランス社会がベストだとは思わないし、彼女もそうは言っていない。彼女の言うように「日本とフランスの学校の『いいとこどり』をすれば、子どもたちはもっと幸せになる」というのはその通りであろう。

そして彼女にはこれからも、空気を読まないで記者会見で質問し続けていただきたい。

(こ)