森バジル『なんで死体がスタジオに!?』(文藝春秋)

ここ半年ほどの間に読んだエンタメ小説の中では、間違いなくトップクラスの面白さであった。森バジル『なんで死体がスタジオに!?』。

テレビ局の若手プロデューサー・幸良涙花(こうら・るいか)。進退をかけた生放送バラエティ「ゴシップ人狼2024秋」の出演者の一人が到着しない。焦る彼女が発見したのは、まさかの――。果たして、誰が「人狼(嘘つき)」か。

次から次へと繰り広げられる驚きの展開。プロデューサーや出演者らそれぞれの思惑。「生放送」という特殊状況下で繰り広げられるドタバタに、ページをめくる手が止まらない。

一応ミステリ仕立てではあり、終盤には様々な「真実」が明らかになるが、ただ本作の魅力はそれにとどまらない。様々な小ネタも差し挟みながら爆走する本作品は、とにかく読者を楽しませる要素が満載のエンタメ小説である。

著者にとって、これが2作目の単行本だという。恐るべき才能である。


(ひ)