中条省平『カミュ伝』を読んだ勢いで、これに挑戦。中条省平訳・カミュ『ペスト』。
コロナ禍の下で、世界的に多く読まれ、話題にもなっていた。
オラン市で突如発生した死の病・ペスト。市全体が封鎖され、人は別離を余儀なくされる――。
不条理の中で生きる人々を描いた群像劇である。主人公格なのは医師・リュー。妻との離れ離れの生活を余儀なくされながらも、保健隊を結成して奔走する。
他にも様々な人物が登場するが、印象深いのは神父・パヌルーである。パヌルーは当初、ペストは神による懲罰であると人々に訴えた。しかし物語の後半、ある出来事を機にパヌルーは悩む。
世界の不条理に対抗するためには、神のような超越的な判断に頼ってはならない。ただひたすら、世界の実相を見つめるのみ――。カミュの思想がよく現れた小説である。
それにしても、読み解いていくのに結構苦労した。こんな難しい本、コロナ禍の下とはいえ、よくもベストセラーになったもんだ。
(ひ)