鈴木忠平『アンビシャス 北海道にボールパークを創った男たち』(文藝春秋)

 北海道日本ハムファイターズが新しいホームスタジアム「エスコンフィールド北海道」に移転して、2ヶ月が過ぎようとしている。移転の経緯については、ファイターズ側の言い分もそうだが、札幌市の側の言い分もあって、ネットを見ていてもほんとうのところはわからない。交渉の最中に札幌にいた大先生は、地元の裏事情もいろいろとご存じであろう。

 ともあれ、いちどは行ってみたいあのスタジアム。その誰も見たことのないボールパークを人口6万人の街に創ってしまった男たちの物語である。

 ファイターズの主役は前沢賢、彼を支える三谷、吉村、そして創業家の大社。北広島市役所職員の川村は、公立進学校が甲子園出場を決めた「ミラクル開成」の4番打者であり、運動公園に高校野球の決勝戦と2軍の試合ができるような野球場をつくるのが目標だった。一方の札幌市長の秋元にとって、大都市ゆえのしがらみがあまりにも大きすぎた。じりじりと時間だけが過ぎていく中で、日本ハムの運命の臨時取締役会が開かれる。

 アンビシャスといえばクラーク博士の言葉だが、その舞台となった島松駅逓所があったのが北広島市であり、市の通りの名前にも、また市のスローガンにもなっている。その言葉はまた、絶えず挑戦をファイターズという球団にも向けられた言葉である。まさにアンビシャスというタイトルがふさわしいノンフィクションである。

 著者は、前作『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』で大宅壮一ノンフィクション賞などを次々と受賞した鈴木忠平。このプロジェクトを描くにはふさわしい書き手であった。

 エスコン、行きたい。サッポロクラシック飲みながらシャウエッセン頬張りたい。

(こ)