町田康訳の「宇治拾遺物語」がお腹を抱えて笑うほど面白かったので,似たようなのはないかと探した結果,たどりついたのがこちら。『ギケイキ 千年の流転』。
古典「義経記(ぎけいき)」をベースにした,源義経の物語である。
ベースと書いたが,現代語訳という範疇を大幅に超えた創作である。しかも,そうでありながら,ここかしこに「義経記」の原文が透けて見える。
物語は,源義経が現代の読者に対して語り掛けるという形を取る。とはいっても町田康の作品である。通常の語り掛けなどではない。冒頭,いきなりハルク・ホーガンの話から始まり,「ハルク判官(ほうがん)」と変換した後,自分への執着の有無という話になってから,
「私は生まれてすぐに父に棄てられた。」
と,生い立ちについての語りが始まる。ここまでわずか数行。とんでもない技量である。
会話はほぼ全編,関西弁。そのリズムとテンポが心地よい。
これから源頼朝に会いに行く,というところで終わった。続巻も出ているとのこと。できれば義経の死まで描き切ってほしい。
- 作者:康, 町田
- 発売日: 2018/06/06
- メディア: 文庫
(ひ)