柳瀬博一『国道16号線 「日本」を創った道』(新潮社)

書評サイトで熱量のすごいレビューを目にしてしまい、ついつい購入。国道16号線については『国道16号線スタディーズ』という社会学の視点からの本があるが、さらにそれを深くしたのが本書というところだろうか(著者いわく、ジャレド・ダイアモンドばりに大風呂敷を広げたらしい)。

国道16号線は、横須賀から横浜、町田、八王子、川越、大宮、野田、柏、千葉、そして木更津から富津へと、首都圏をぐるり一周する延長326キロの環状道路である。
その国道16号線を、ブラタモリ的に沿道をあらゆる角度から掘り下げていくというものであり、プレートの運動によって半島と湾と平野と台地と丘陵がつくられ、そこに大きな河川と小さな河川が入り乱れるという、このユニークな地形の上に(、そのことで中央集権的な権力は関東では成り立たなかったがゆえに)、古代の貝塚から、中世の鎌倉と坂東武者たち、近代の殖産興業と生糸、現代のニュータウン、ショッピングモール、米軍基地、クレヨンしんちゃんユーミンなどなどが乗っかるという、関東の歴史が凝縮され、日本の縮図としての「国道16号線」が描き出される。

残念ながら、京都人には頭の中で映像を描くことが難しく、関東の人が読むほどには感情移入できなかったせいもあって、そこまで熱く語ることはできないのだが、それでも十分そのおもしろさは伝わった。

果たして関西を舞台に「国道170号線」という本は書けるのだろうか。きっと本書に刺激されて、そういう人が出てくるのだろう、と期待している。

 

 ↓ これがその書評

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国道16号線―「日本」を創った道―

国道16号線―「日本」を創った道―

 

 (こ)