モーパッサン『脂肪の塊/ロンドリ姉妹』(太田浩一訳・光文社古典新訳文庫)

フランス文学つながりで,モーパッサンを読むことに。今回は『脂肪の塊/ロンドリ姉妹』。表題作を含めた中・短編集である。

モーパッサン。長編『女の一生』は読んだことがあるけれど,中・短編をまとめて読むのは初めてかもしれない。面白い話,悲しい話,不思議な話・・・。様々なバリエーションに富む話が収録されていて,全く飽きるところがない。

でもやっぱり印象に残るのは,「脂肪の塊」である。

普仏戦争プロイセン軍に占領されたフランス・ルーアン。それぞれ事情を抱えた10人の男女が乗合馬車に乗り込む。その中に一人,娼婦がいて・・・。

まあ,ひどいね。やるせないね。見た目はいい人たちのエゴというか,独善というか。フランス国歌ラ・マルセイエーズがまた,切ない。

ところで「脂肪の塊」という日本語タイトル,何とかならないのかな。もうそろそろ他のタイトル,例えば本書で訳者も提示している「ブール・ド・スュイフ」とかに変えてもよい頃ではないかと思うのだけれど・・・ここまで定着してしまうと,もう難しいのかもね。


(ひ)