大村はま『教えるということ』(ちくま学芸文庫)

大村はま、という「伝説の国語教師」が東京の中学校にいた。伝説といっても、金八先生とかGTOとかとは違って、とにかく授業の鬼なのだ。
伝説の教師なだけに、教え子たちによる「大村はま国語教育の会」というのもある。その事務局長が苅谷夏子さん(苅谷剛彦氏のお連れ合い)なので、私は大村せんせいの義理の孫弟子(孫教え子?)、ということになる、と、ちょっとだけ自慢しておく。

さて、本書はその大村先生の4つの講演録(「教えるということ」1970、「教師の仕事」1973、「教室に魅力を」1985、「若いときにしておいてよかったと思うこと」1986)をまとめたものである。

この本を読むのは3回目なのだが、以前(といってもずいぶんと昔)読んだ時の理解とはまったく違う読み方をすることになり、どうまとめてみたらよいか、戸惑っているのである。

感想自体は変わらない。ひとことで言えば、きびしいなぁ、というものである。
要するに、
「いい先生、熱心な先生であることは当たり前」
「生徒がわからないのは、教え方が悪いから」
なのであって、子どもたちの学びを引き出せずにわからないまま放っておいて、「勉強しないからだ」と子どものせいにする教師は、失格だと言い切る。

・・・やっぱり、きびしいなぁ。

ただ、若いころに読んだときには、あまりにもストイックに授業実践を突き詰めるその姿勢に、どこか距離を覚えていたのだが、しかし今では、その厳しさの裏側にある、後輩教師たちに伝えたいことが、この仕事を四半世紀やってきた今なら、なんだかわかる気がするのである。

その自分の中の変化を見つめつつ、「先生、それはきびしいですよ~」とぼやきながらも、にこにこしながら読んでいる自分がいて、そして自分ならば、後輩たちにどういう言葉を残せるだろうか、そんなことを考えたりしているのだけれど、どうにもまとまらないので、このへんで。ごめんなさい。

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帯にはこうある。
「子育てに迷える人に出会ってほしい本、No.1!」
「ある伝説の国語教師が40年以上前に記し遺した本が、いま育児書としても注目を集めています」
そうなのかぁ・・・でもやっぱり、育児書とはどこか違うと思うな・・・。
「教師としての立場」から子どもたちに向き合い、教師の後輩たちに向けて贈っていることばなのであって・・・。

 

 

新編 教えるということ (ちくま学芸文庫)

新編 教えるということ (ちくま学芸文庫)

  • 作者:大村 はま
  • 発売日: 1996/06/01
  • メディア: 文庫
 

 (こ)