野崎まど『HELLO WORLD』(集英社文庫)

映画「HELLO WORLD」を見た後,少しモヤモヤしたものが残った。
ストーリーがちょっと破綻しているのではないか。
この点,「原作」に当たる小説版ではどうなっていたのだろう。そう思って,読んでみた。野崎まど『HELLO WORLD』。

・・・そ う い う こ と か !

僕は映画のラストシーンを思いっきり誤読していた。
そりゃ,つじつま合わなくなるよ~。
ネット上の感想とかを見ると,同じ誤読をしているっぽい人,結構いるなぁ。
(誤読をさせてしまう映画ってどうよ,という気もしなくもないが。)

この小説版,ストーリーに破綻はない。っていうか,本当によくできている。映画版はちょっとフワフワしたSFラブストーリー,という印象も強かったが,小説版を読むと,実は硬派なSFであったということがよく分かる。しかも,映画版よりも丁寧な心理描写がつづられているし,何よりもまず,少年の「成長物語」としての側面が強く打ち出されている。

読後感,とてもよかった。
モヤモヤなんて全く残らない。いい小説である。

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で。

ネット上での評判が高かったことから,スピンオフ小説である伊瀬ネキセ『HELLO WORLD if ―勘解由小路三鈴は世界で最初の失恋をする―』も読んでみた。・・・いや,いい年して何を読んでるんだという気がしなくもないが(正直,買いづらい表紙とタイトルではある)。

スピンオフ小説といいながら,映画で描き切れなかったところをいろいろ補完してくれる。「開闢(かいびゃく)」って,そういう意味だったのか・・・って映画見ただけでそこまで分かるか~(笑)!!

結論。

HELLO WORLD」は,劇場版と小説版とスピンオフ小説とを併せて,初めて全貌を理解することのできる物語である。

HELLO WORLD (集英社文庫)

HELLO WORLD (集英社文庫)



(ひ)