青山美智子『猫のお告げは樹の下で』(宝島社)

 おもしろい本が読みたいなぁ・・・とぼんやり考えながら、いつもと違う道を歩いて帰ろうとすると、大きなタラヨウの樹のある神社があった。こんなところに神社なんてあったっけ、と思ってふらりと入ってみると、足元に1匹の猫がやってきた。黒くて、顔の額から鼻にかけて白い、ハチワレの猫だ。お尻には白い☆の模様がある。「なぁ、何かおもしろい小説、知らない?」と猫に話しかけてみると、猫は目を細めた(笑った?)。そして猫はタラヨウの樹の周りをくるくると走り出し、ピタリと止まって樹に左足をかけた。1枚の葉が頭の上に落ちてきた。「オツゲ」と書いてある。「?」。猫の姿はあっという間に見えなくなった。作務衣を着た宮司さんが竹ぼうきを持ってやってきた。「どうされましたか?」「この葉っぱ、猫が・・・?」「あなたは運がいい。ミクジに会ったんですね」「ミクジ?」「そうです。その言葉はあなたへのお告げです。どうぞ大切になさってください」
 家に帰って、アマゾンで買い物をして、ついでにいろいろ眺めていたら、『猫のお告げは樹の下で』という本が表示された。「オツゲ・・・!?」思わずポチっと購入ボタンを押した。
 その本によれば、どうやらミクジは、ときどきタラヨウの葉っぱでお告げをしているらしい。失恋した女性には「ニシムキ」と、中学生の娘と仲良くなりたい父には「チケット」と、なりたいものがわからない就活生には「ポイント」と、頑固おやじには「タネマキ」と、転校先でクラスになじめない男の子には「マンナカ」と、漫画家への夢をあきらめきれない主婦には「スペース」と、悩める占い師には「タマタマ」と・・・。宮司さんもこのあいだミクジから葉っぱを受け取ったらしい。
 ミクジが導く、7つのやさしい物語。8つ目の物語は、ぼくのこの本との出会いなんだろう。

猫のお告げは樹の下で

猫のお告げは樹の下で

 

 (こ)