朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』(中央公論新社)

既に読み終えてから4,5日経つが,まだこの小説のインパクトから抜け出せないでいる。朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』。

北海道の病院で植物状態のまま眠り続ける「智也」と,これを見守る「雄介」。2人の間に横たわるのは,友情か,それとも・・・。

平成の時代における生きづらさを,「平成」という文字を一切使わずに(僕が見落としていなければ,だけど)描き出した大作である。生きがいって何だろう,オンリーワンって何だろう・・・。登場人物たちの焦燥がひしひしと伝わってくる。

ところでこの作品は,先に紹介した「螺旋プロジェクト」の1つ。伊坂幸太郎の呼びかけで始まった8名9組の作家の競作プロジェクトである。本作では,朝井リョウ本来のリアルな心理描写に,伊坂幸太郎的なファンタジー要素(「海族と山族の対立」など)が盛り込まれ,見たことのない化学変化を起こしている。

最終章は圧巻であった。

死にがいを求めて生きているの

死にがいを求めて生きているの


(ひ)