辻村深月『凍りのくじら』(講談社文庫)

『ぼくにとっての「SF」は、サイエンス・フィクションではなくて、「少し不思議な物語」のSF(すこし・ふしぎ)なのです』(藤子・F・不二雄

 高校生の理帆子と、失踪した写真家の父、ガンで闘病する母、両親の親友で世界的ピアニスト・松永、ストーカーとなる元彼・若尾、言葉を失った郁也少年、別所あきら先輩、友人たち・・・そんな彼女の、Sukoshi Fushigiで、Sukoshi Funwariして、Sugoku Furueru物語。

 すべての章が、ドラえもんの道具の名前になっていて、参考資料は、『ドラえもん』全45巻と、『大長編ドラえもん』と、そこに流れる哲学と優しさの全て。

  辻村深月、25歳の作品である。

 そんな彼女が、来月公開の映画ドラえもんの脚本を手がけている。
 ノベライズされたドラえもんは、ちょっと読みづらかったけれど(読みながら映像と声が聞こえてくるのは、どうも落ち着かない)、彼女のドラえもん愛は十分に伝わってくる。

 

 「大事なことは、全て、『ドラえもん』と藤子先生から。」

凍りのくじら (講談社文庫)

凍りのくじら (講談社文庫)

 

(こ)