パスカル『パンセ(抄)』(鹿島茂訳,飛鳥新社)/アウグスティヌス『告白 III』(山田晶訳,中公文庫)

これまでいろいろ思想・哲学の本をアドホックに読んできたけれど,ちょっと基礎的なところから整理したくなって,小寺聡編『もういちど読む山川倫理』(山川出版社)を購入して読んだ(夏休みだし。)。高校の教科書を大人向けにアレンジしたシリーズの一冊である。「客観的な事実の提示(誰がどういう本を著し,どういう見解を唱えたか)」と「主観的な見解の提示(その見解は現代社会においてどのような意義を有するか)」のバランスが絶妙であった。このような教科書で倫理を学べる高校生は恵まれていると思う。

さて,この『もういちど読む山川倫理』にインスパイアされて読んだのが,パスカル『パンセ』(抄訳。鹿島茂訳,飛鳥新社)と,アウグスティヌス『告白 III』(山田晶訳,中公文庫)の二冊。

まず,パスカル『パンセ』から。・・・はい。これまで読んでいませんでした。興味はあったのだけれども,キリスト教の教義についての話が延々と続くイメージがあって,なかなか購入までには至らなかったのです。ただ,読まず嫌いになるのもなあ,と思い,まずは鹿島茂の抄訳からチャレンジ(『日経おとなのOFF』での鹿島氏のインタビューが面白かったというのもある。)。

・・・で,内容。これは「幸福論」だねえ。人間論といってもいいかもしれない。そうだよね,人はついつい,他人からよく思われたいとか,さらに多くの財産がほしいとか,いろいろ思ってしまうんだけれども,でもそれで幸せになれるかというと,そうでもないよね,と。

有名な「考える葦」の箇所についても,今回初めて,その前後を通して読むことができた。「私たちはその考えるというところから立ち上がらなければならない」,「ゆえに,よく考えるよう努力しよう。ここに道徳の原理があるのだ」,と。この精神は忘れずにいたい。

次に,アウグスティヌス『告白』。こちらは実は,「第10巻」まで(中公文庫版の『II』まで)は読んでいたのだけれど,そこで中座していた。だって,自己の半生を振り返る「第10巻」までとは異なり,「第11巻」以降は難解だっていうじゃないですか。・・・でも,中座したままにしているのも何なので,この際チャレンジしてみた。

・・・うん,確かに難解ですが(「創世記」の解釈論が延々と続く。),格調高い訳文のおかげか,なんとか最後まで読めましたよ。どこまで理解できたのか自信はないですが(特に最後の「第13巻」)。

この『告白』の中で,アウグスティヌスは,キリスト教徒としての心情とか思考とかを惜しげもなくあらわにしている。この点は大きな収穫であった。

僕はキリスト教徒ではないので,キリスト教徒の思考や心情とかは直接体験することができない。しかし,そもそも西洋文化というものはキリスト教文化であるし,僕らが享受している政治制度・社会制度の多くはキリスト教文化圏由来のものである。そうでなくてもこのグローバル社会である。西洋の人たちがどのような心情を持ち,どのような思考をしているのかを知ることは,とても重要なことであろう。

パスカル パンセ抄

パスカル パンセ抄


(ひ)