宮下志朗『モンテーニュ 人生を旅するための7章』(岩波新書)

読んでみたいとは思うけれど,でも読み切れないだろうなとも思っている本がいくつかある。モンテーニュの『エセー(随想録)』もその1つで,興味はあるんだけれども,白水社版で全7巻という分量にちょっと腰が引けてしまうのである。

そう思っていたところ,その白水社版の翻訳者による入門書,というかコンパクトな選文集が出た。宮下志朗モンテーニュ 人生を旅するための7章』。

・・・いやあ,モンテーニュ,おもしろいなあ。もっと堅苦しいものを想像していたのだけれど,その文章は軽快で,読んでいて楽しい。決して説教ぶらず,偉ぶらないところがまたいい。

著者はいう。「モンテーニュを読んでいて,わたしのような凡庸な人間が救われるのは,あまり厳しいことをいわれないからだ。彼は人間存在というものは,矛盾もあるし,欠点もあると思っている。それで仕方ないじゃないかとも思っている。」。この姿勢,好きだなあ。


(ひ)