2019年度上半期の直木賞候補作が,以下のとおり発表されました。
・朝倉かすみ『平場の月』(光文社)
・大島真寿美『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』(文藝春秋)
・窪美澄『トリニティ』(新潮社)
・澤田瞳子『落花』(中央公論新社)
・原田マハ『美しき愚かものたちのタブロー』(文藝春秋)
・柚木麻子『マジカルグランマ』(朝日新聞出版)
先週予想していた柚木麻子,窪美澄,原田マハがノミネート! また,当ブログで過去の作品を紹介していた澤田瞳子もノミネートされました! さらに今回は,今年の山本賞で絶賛されていた朝倉かすみも入っています。う~ん,レベルが高い。
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さて。
その窪美澄のノミネート作である。『トリニティ』。
フリーライターの登紀子。イラストレーターの妙子。専業主婦の鈴子。戦後の昭和から平成までそれぞれ戦い抜いた3人の女性を,鈴子の孫・奈帆の視線も交えながら,壮大に紡ぎだした大作である。
昨年,当ブログで『じっと手を見る』を紹介した際,僕は「窪美澄が,少し,殻を破り始めたのかもしれない。」と書いた。本作『トリニティ』は,殻を破り始めたどころではない。化けた。大変身した。これまではどちらかというと,半径10メートルくらいの身近な生活を描いた作品が多かった(それはそれでとても面白かった)が,本作では,戦後の日本における女性の「生き方」というものを,様々な歴史的出来事も織り込みながら見事に描き出している。
久々に,時間がたつのも忘れて読むのに没頭した一冊である。
- 作者: 窪美澄
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2019/03/29
- メディア: 単行本
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(ひ)