柚木麻子『マジカルグランマ』(朝日新聞出版)

書評で興味を惹かれたので読んでみた。柚木麻子『マジカルグランマ』。

タイトルから分かるとおり,いつもニコニコしている優しいおばあちゃんが,いろいろ解決する物語・・・

・・・ではない。

マジカルニグロ,という言葉がある。一昔前のハリウッド映画なんかに出てくる,「白人を救済するためだけに存在する献身的なステレオタイプの黒人」をいう。本作品にいう「マジカルグランマ」とは,マジカルニグロと同様,ステレオタイプに描かれた老婦人像であり,「いつも優しくて,・・・老いの醜さや賢しさを持たないキュートなおばあちゃん」(164頁)を指す。

本作品は,そのような「理想のおばあちゃん」像にいったん染まり,そして抗い,ぶち壊そうとする,一人の女性の物語である。高齢者問題,セクハラ,ジェンダー認知症,保育園新設反対運動,ゴミ屋敷・・。現代の日本社会における様々な問題がてんこ盛りに詰め込まれた,大作品となっている。

このような重いテーマを扱いながらも,柚木麻子の筆は,あくまでも軽い。登場人物も何だかんだいって前向きである。暗い小説では,決して,ない。

マジカルグランマ

マジカルグランマ


(ひ)