新書のジャンルに「自立本」というのがあるんだそうで、自立するくらい分厚い新書本のことをいうらしい(そのまんま)。
本書も本文630ページの自立本。税別1,400円だから1ページ2円ちょっと。内容は、大澤真幸先生が、講談社の編集者さん相手に社会学史の講義を行い、それを文字起こししたものである。もうコスパ最高。
帯に名前が出ているだけでも、
アリストテレス、グロティウス、パスカル、ホッブズ、ロック、ルソー、スミス、コント、スペンサー、マルクス、エンゲルス、カント、フォイエルバッハ、ヘーゲル、フィヒテ、フロイト、デュルケーム、ジンメル、ヴェーバー、パーソンズ、トマス、パーク、マートン、ミード、シュッツ、ブルーマー、ガーフィンケル、ゴフマン、ベッカー、ルーマン、フーコー、レヴィ=ストロース、デリダ、ブルデュー、ハーバーマス、ボードリヤール、リオタール、ギデンズ、バウマン、トッド、メイヤスー
・・・と錚々たる面々が名を連ね、さらに派生して登場する社会(科)学者は数知れず。
読むのにかなり時間がかかってしまったが、その理由はひとえに自らの勉強不足のせいであって、社会学を少しかじったものとしてただただ恥じ入るばかり。
ところで、AIが発展すればするほど、人間がどのようにものごとを認識したり区別したりしているのかについての研究は進み、社会学と情報工学との接近はますます進んでいる。
これまでも、数学的な思弁と社会学とはたえざる緊張関係をはらみながらも長らく共存してきた。
かつてはひとつの「哲学」であった学問が細分化されていく過程が科学の歴史なのだが、21世紀にふたたびそれらが融合するのだとすれば、まさに今、転換期に立ち会っているということになろうか。
この本を読んだ後、いしいひさいち『現代思想の遭難者たち』を読み返してみた。あらためて、いしいひさいちは天才だと思う。
(こ)