遠藤周作『反逆(上・下)』(講談社文庫)

 大先生、新天地での1ヶ月、おつかれさまでした!

 さて、遠藤周作荒木村重をどう描いたのか。
 主な登場人物はほぼ同じ。織田信長と、信長を裏切った松永久秀荒木村重明智光秀(そして実は羽柴秀吉もそのひとり)を軸に、賤ヶ岳の合戦に勝利して秀吉が天下をほぼ掌中に収めるまでが描かれる。
 遠藤文学らしく、全編を通して「弱い自分」が主題として貫かれ、ただひとり「強い(強すぎる)」信長に照らされて、その「弱さ」が浮き彫りになる。自分の意に反してひとたびは信長に屈した村重と、同じく信仰と領主としての現実との挟間で懊悩する高山右近とが対をなしながら、物語は進行する。光秀も前田利家も同じである。イエスをいちどは裏切りながら、最後は信仰に殉じた弟子たちもまた同じであった。
 一方には器用に時代の潮流に乗ろうとする人たちがいて、一方には、そんな戦国の世にあっても凜とした生き様(死に様)を見せる人たちがいる。嫉妬とコンプレックスと自尊心と地位と立場と、そんなものがない交ぜになる中で・・・そして「おまえはどう生きるのだ?」

 なお、本作に登場する竹井藤蔵は、著者の母方の遠い祖先にあたる血筋らしい。また村重が隠居した摂津・住吉には著者の母校・灘高校がある。そんな意味でも、少し違った思い入れのある作品なんだ・・・とかいうのはエピローグより。

反逆(上) (講談社文庫)

反逆(上) (講談社文庫)

 

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