垣根涼介『室町無頼』(全2巻,新潮文庫)

「文庫化されたら読もう」と思っていたところ,文庫化された。この2月はそういう作品が多かった。これもその一つ。垣根涼介『室町無頼』。
 
応仁の乱より少し前の,京の都。治安は乱れ,町には餓死者があふれている。少年・才蔵は,ならず者の頭目にして市中警護役の骨皮道賢(ほねかわどうけん)に拾われ,浮浪の徒・蓮田兵衛(はすだひょうえ)に預けられる。やがてこの3名は,それぞれの立場で,時代の扉を切り開いていく・・・。
 
室町時代の京都という舞台設定がよい。戦国時代という実力主義の世の中よりも,わずかばかり前。いわば「夜明け前」の時代である。そこで生き,それぞれの「役割」を果たそうとする3名の男たち。これが面白くないわけがない。なお,このうち骨皮道賢と蓮田兵衛は実在した人物でもある。
 
個人的には,比叡山の山法師・法妙坊暁信のキャラクターが良かった。基本的には悪役なんだけれども,どこか憎めない。気が付けば,ちょっと心の中で応援したりしていた。
室町無頼(上) (新潮文庫)

室町無頼(上) (新潮文庫)


室町無頼(下) (新潮文庫)

室町無頼(下) (新潮文庫)


(ひ)