プラトン『テアイテトス』(渡辺邦夫訳,光文社古典新訳文庫)

光文社古典新訳文庫では,1,2年に1冊くらいの割合でプラトンの著作を刊行している(僕もずっと読み続けている。)。本が売れない,ましてやギリシャ哲学の本などそうそう売れないのではないかもと思われるこの時代にあって,貴重な存在である。
 
今回,『テアイテトス』の新訳が刊行されたので,早速読んだ。「知識とは何か」をテーマに,若き数学者・テアイテトスがソクラテスと対話する。
 
書かれている言葉は平易だが,内容は決して平易なものではない。僕もどれだけ理解できたのか,心もとない。それでも,普段使っていない頭の部分を使って読書するというのは,なかなか楽しい。本書では時折,ソクラテスが「脱線」するのだが,これもまた,面白い。
 
それにしても,『テアイテトス』におけるソクラテスの問いは,どこまでも優しい。これに対するテアイテトスの受け答えも,真摯で心地よい。こういう先生と生徒,いいなあ。
テアイテトス (光文社古典新訳文庫)

テアイテトス (光文社古典新訳文庫)

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