安田浩一『「右翼」の戦後史』(講談社現代新書)

生徒に「ウヨクって何ですか?」と質問された。
「右翼」とか「右派」というのは、フランス革命のときに議場左翼に陣取った急進派に対して、保守派が議場右翼に陣取ったことが言葉の由来で、個人主義を批判して伝統とか民族とか国家とか家族の一体感を強調したりとか・・・と話してみても、この説明では「ネトウヨ」の説明にはなっていない。リベラルな発言をする天皇や皇太子を「反日パヨク」呼ばわりするウヨクを、いったいどうやって伝統や民族主義と結びつけることができるのだろう。

そんな折、1960年代のニュース映像を見ていたら、アメリカの原子力空母入港に反対するデモ隊を、米軍歓迎を叫びながら攻撃している右翼のようすが映し出されて、へぇ、と声を上げてしまった。そこで、「右翼とは何か」という本はたくさんあるけれど、今ここでいちど整理がしたいと思ったときに見かけたのが本書であった。

本書は「反左翼(反共)」を掲げて活動してきた戦後右翼が、左翼の衰退とともに方向性を見失い、排外主義と差別主義へと溶解していく過程を追ったものである。
戦後右翼を「伝統右翼」「行動右翼」「宗教右翼」「任侠右翼」「新右翼」「ネット右翼」に分類し、地道な取材にもとづいて、その心性にたどり着こうとする。

そしてたどり着いた先にあったものは、日本社会の極右化の加速であり、底抜けであった。

「右翼」の戦後史 (講談社現代新書)

「右翼」の戦後史 (講談社現代新書)

 

 (こ)