橋本治『これで古典がよくわかる』(ちくま文庫)

橋本治氏が亡くなった。

10代の終わり頃,橋本治氏の本ばかり読んでいた時期があった。しかも繰り返し繰り返し。なぜそこまで読み込んだのか,今となっては自分でもよく分からないのだが,何かこう,自分の気持ちを半歩先で代弁してくれているような感覚があったからかもしれない。

ひょんなことからサイン会にも行った。おずおずと『桃尻娘』(すごいタイトルだ・・)を差し出すと,「おっ! 僕のデビュー作! 懐かしいね~!」とニコニコしながらサインしていただいたのを今でも覚えている。

最近は全く読んでいなかった。サイン本もどこかへ行ってしまった。

訃報に接し,久々に読んでみようと本屋に行った。さすがに昔の作品群は全く売られていなかった。できるだけ古い時代の本を・・・と思って購入したのが,この本。『これで古典がよくわかる』である。単行本としては1997年刊。今から20年ほど前の本である。

内容は,日本の古典について,古代から平安・鎌倉時代までの代表的な作品を分かりやすく解説するというもの。もっとも,この本では,それぞれの古典作品の内容や時代背景よりも,そこで用いられている文体,さらにいえば「日本語」そのものに大きく焦点を当てている。分かりやすい日本語と,分かりにくい日本語。書き言葉による日本語と,話し言葉による日本語。

初期作品群ではとことんまで日本語の文体にこだわり抜いていた橋本治氏。この本は,氏による優れた日本語論でもある。

これで古典がよくわかる (ちくま文庫)

これで古典がよくわかる (ちくま文庫)

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