コンラッド『闇の奥』(黒原敏行訳,光文社古典新訳文庫)

アフリカの奥地で見た「真実」とは。コンラッド『闇の奥』。

船乗りマーロウは,川をさかのぼる蒸気船の船長になるべく,アフリカの奥地に赴いた。そこで耳にしたのは,「クルツ」という男の噂。マーロウは男に会おうとするが・・・。

今から100年以上も前,1899年に発表された小説である。ある程度,著者コンラッドの実体験がベースになっている模様。もっとも,本作品は,単なる体験談を遙かに超えた,混沌とした問題作である。植民地での搾取。大量の象牙。生と紙一重の死。フランシス・コッポラがこれに触発されて問題作『地獄の黙示録』を撮ったというのも,分かる気がする(舞台もストーリーも違うけれど,問題意識は共有している。)。

僕が今回読んだのは,2009年の新訳版。本屋でふと手に取り,「訳者あとがき」をパラパラ読んでみて興味をそそられた。普通は興味をそそる「あとがき」ってなかなかないんだけれど,これは例外。翻訳上の工夫につき微細に書かれていて,おもしろかった。

闇の奥 (光文社古典新訳文庫)

闇の奥 (光文社古典新訳文庫)

(ひ)