中学生の頃に読んでから,もう何年になるだろう。僕にとっては衝撃であった。当時読んだ小説の中で衝撃を受けたもの(面白かった,ではなく)を3冊選べと言われれば,間違いなく入った。以後,一度も読み返してこなかった。
でも,記憶も随分薄れてきたし,最近の自分の中での太宰ブームにも押されて,再読。
とにかく暗いという記憶だったのだが,改めて読み返してみると,文学性が高い。・・・当たり前だろうと言われるかもしれないが,そう思ったのだから仕方がない。
主人公はどうしようもない男である。でも,突き放すことができない。というより,むしろ,読み手である僕の心の中のどこかを投影しているような,そんな怖さがある。おそろしい小説である。
昭和23年5月12日に脱稿し,その約1か月後の6月13日,太宰は玉川上水に入水する。もう,燃え尽きた,のだろうか(まだ『グッド・バイ』を書いていたけれど)。作家というのは,因果な商売である。
- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/01
- メディア: 文庫
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