太宰治『人間失格』(新潮文庫)

・・・結局,読んでしまった。太宰治人間失格』。

中学生の頃に読んでから,もう何年になるだろう。僕にとっては衝撃であった。当時読んだ小説の中で衝撃を受けたもの(面白かった,ではなく)を3冊選べと言われれば,間違いなく入った。以後,一度も読み返してこなかった。

でも,記憶も随分薄れてきたし,最近の自分の中での太宰ブームにも押されて,再読。

とにかく暗いという記憶だったのだが,改めて読み返してみると,文学性が高い。・・・当たり前だろうと言われるかもしれないが,そう思ったのだから仕方がない。

主人公はどうしようもない男である。でも,突き放すことができない。というより,むしろ,読み手である僕の心の中のどこかを投影しているような,そんな怖さがある。おそろしい小説である。

昭和23年5月12日に脱稿し,その約1か月後の6月13日,太宰は玉川上水に入水する。もう,燃え尽きた,のだろうか(まだ『グッド・バイ』を書いていたけれど)。作家というのは,因果な商売である。

人間失格 (新潮文庫)

人間失格 (新潮文庫)

(ひ)