和田裕弘『信長公記―戦国覇者の一級史料』(中公新書)

垣根涼介『信長の原理』読了後,たまたま見つけたので読んでみた。和田裕弘信長公記―戦国覇者の一級史料』。

信長公記(しんちょうこうき)」は,織田信長の一代記である。著者は信長の馬廻衆であった太田牛一。「父親の葬儀で抹香を投げつける」,「斎藤道三との初会見」など小説でおなじみのエピソードは,「信長公記」が初出だったりもする。『信長公記―戦国覇者の一級史料』は,この「信長公記」について28のトピックを取り上げ,伝本間の異同や,他の資料との突き合わせなども交えながら,解説を加えたものである。

実は「信長公記」,中学生の頃に現代語訳を読んでみたことがあった。そこそこ面白かったのだけれども,どこまでが現在では「史実」とされている出来事なのかとか,あるいは出来事の前後関係とかなんかが,ときどき分からなくなることもあった。当時の時点でこの本のような簡易な解説書に巡り会えていれば,理解はもっと進んでいただろう。

太田牛一の伝える織田信長像は,「鬼神」でも「合理的な近代人」でもない。戦国時代に生きた等身大の戦国大名として,織田信長を伝えている。そこが逆に,とても新鮮な感じがする。

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