今年上半期、たくさんの新書が刊行されたけれど、個人的に1位はこれだと思う。
『永続敗戦論』で一躍論壇に躍り出た白井聡氏が、近代前半(明治維新~敗戦)と近代後半(敗戦~現在)について「国体」の形成・安定・崩壊、という3つの時代区分を設定しながら、現在日本の立ち位置を浮かび上がらせる論考である。
戦前の「国体」(近代天皇制)に類するものは何か、それが「対米従属体制」であり、その形成期・安定期を経て、現在は「対米従属の自己目的化」のプロセスにある、ということになる。対米従属はその見返りに「アメリカの第一の子分」と「アジアで唯一の先進国」の地位を約束してくれた。しかし今、その幻想はもろくも崩れ去ってしまった。「だからこそ」なんとしてでも「アメリカに愛されなければならない」。先週亡くなった翁長沖縄県知事の沖縄と米軍と日米安保をめぐる根源的な問いかけに、日本政府と日本国民が答えることができなかった理由も、ここにある。
そうであるならば、近代前半における「国体の崩壊」過程が破滅の道を突き進んだように、現在が「国体の崩壊過程」もまた、自滅への道をひた走っているということになる。そう、二度目は喜劇として。
彼がこの本を書いたのは、今上天皇の静かにして烈しい「お言葉」と、それを嘲笑うかのような現政権との落差に突き動かされたからだという。平成の終わりを前に、この国はどこへ向かうのか。安倍政権がめざす憲法改正によって完成する「永続敗戦レジーム」によって、この国はどこへ向かうのか。日本だけでなく、世界秩序がゆるやかに壊れているのであれば、われわれはどこへ向かうのか・・・?
すでに多くの書評が出され、評価は大きく分かれている。議論がアクロバティックになっている感も否めない。しかし、それを踏まえて、8月15日に読む本としては、悪くない。
- 作者: 白井聡
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2018/04/17
- メディア: 新書
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(こ)