橋爪大三郎=植木雅俊『ほんとうの法華経』(ちくま新書)

『日経おとなのOFF』という雑誌があって,1,2年に一度くらい,名著特集をする。今月発売の8月号がその名著特集の号で,古今東西の様々な名著が紹介されている。この8月号を眺めながら,この本は読んだなあ,とか,まだ読んでないなあ,今度読もうかなあ,などと思っていると・・・

法華経

が出てきた。法華経? お経じゃないか? そもそも読めるのか?(失礼)。
気になったので読んでみることにした。といっても,いきなり原典の現代語訳に当たるのはハードルが高そうなので,この本にしてみた。橋爪大三郎=植木雅俊『ほんとうの法華経』。

ご存じ橋爪大三郎と,サンスクリット原典からの現代語訳を行った研究家・植木雅俊との対談である。基本的に,橋爪氏が質問し,植木氏がそれに答える,という形で進められていくのであるが,橋爪氏の質問がうまく,植木氏の解説を本当に上手に引き出している。しかも内容は単なる入門書にとどまらず,法華経の第1章「序品(じょぼん)」から第27章「嘱累品(ぞくるいぼん)」までを,一つ一つ丁寧にたどっていく(おかげで新書にしては随分と分厚くなったが)。ところどころに挿入されているキリスト教との対比や,法華経の成立過程の話(どの章がどこで後から付け加えられたか,等)も,我々の理解を助ける。

最澄が「最高の経典」と述べ,日蓮が最も大切にし,法然親鸞も修行中に学び,道元も晩年に心服した『法華経』。さらにさかのぼれば聖徳太子も注釈書(三経義疏)を書いていた。このような歴史上の人物が連綿と読み継いできたテキストを,現代に生きる僕も読んでいる(あくまで対談の中で紹介されている限りで,だけど)というのは,ちょっと不思議な体験である。

次はいよいよ,現代語訳を全部通して読んでみるか。いつ読めるのか,そもそも読み切れるのか,あんまり自信はないけれど。

ほんとうの法華経 (ちくま新書)

ほんとうの法華経 (ちくま新書)

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