佐藤優・片山杜秀『平成史』(小学館)

 2018年6月18日。揺れた。
 震度5を体験したのは、1995年1月17日、2011年3月11日に次いで、3度目だ。
 平成という時代がまもなく終わる。平成はいろんなものが揺れた時代だった。

 このふたりが語る「平成」という時代は、昭和という知的に洗練された「大きな物語」に支えられた時代と違って、ポストモダンの嵐の中で「小さな差異」ばかりが強調される時代である。大きな物語の喪失は、コツコツ勉強して真面目にやったらきっと報われるという神話が消滅したことでもある。そうした中で、右肩上がりの時代から、足の引っ張り合いの時代が始まる。
 そんな時代だからこそ、一貫性がなく実証性と客観性に乏しく場当たり的で曖昧で刹那的な安倍晋三という人物の言葉が次から次へと吐き出され続けるのだというふたりの認識は、とてもわかりやすい。
 もっともその流れは、小泉純一郎菅直人野田佳彦から受け継いだものであり、逆に何でも計算できると考え計算しようとした鳩山由紀夫はすぐに政権から追われることになる。

  思想史に造詣の深いふたりの対談なので、議論の奥行きがとにかく深く、射程がとにかく広い。平成の終わりを前にして、ぱらぱらと出始める「平成史」の中でも、ちょっと異色の1冊。

平成史

平成史

 

 (こ)