麻耶雄嵩『友達以上探偵未満』(角川書店)

ここしばらく重たい本が続いたので,たまには肩肘の張らないミステリを,と思って読んだところ,意外に面白かった。麻耶雄嵩『友達以上探偵未満』。

事件が起こって,謎があって,それを「探偵」役が謎解きする,という王道の本格ミステリだが,本作品の「探偵」役は伊賀上野の高校生,「伊賀もも」と「上野あお」の2人。1人ではなくて,2人。しかも高校生である。

3つの短編が収録されており,第1話の「伊賀の里殺人事件」と第2話の「夢うつつ殺人事件」は,それなりにオーソドックスに話が進む。第3話の「夏の合宿殺人事件」が秀逸。2人が「探偵」となっていく経緯が語られるのだけれど・・・。この第3話を読んでから,改めて第1話及び第2話を読み返してみると,ああ,なるほどな,と思わせるところがある。

「伊賀もも」の直感力と,「上野あお」の論理力。時として反目しつつも,最終的には2人の力で事件を解きほぐしていく。探偵役は1人っていうミステリ界のお約束に対するアンチテーゼ,と言ったら褒めすぎかも。

ふんだんにちりばめられた小ネタも読者をくすぐる。全体的なラノベっぽさも含めて,現代におけるミステリの一つの形なのかもしれない。

友達以上探偵未満

友達以上探偵未満

(ひ)