是枝裕和『万引き家族』(配給:GAGA、ノベライズ:宝島社)

 柴田治は、妻の信代、息子の翔太、母の初枝、妻の妹の亜紀の5人暮らし。足りない生活費を万引きで補って、なんとか暮らしている。凍えそうなある冬の夜のこと、親から虐待を受けてベランダでうずくまる少女を治と翔太は家に連れてくる。返しにいくのだが、「ゆり」という少女は5人と暮らすことを選ぶ。
 2時間の映画、前半1時間は6人のささやかだが幸せな暮らしが描かれる。ピークは、家族で海水浴に行くシーン。いつまでもこの幸せが続けばいいのに、と誰もが思ったところで、後半、家族が少しずつ、壊れていく。
 6人をつなげていたのは、愛なのか、金なのか、過去なのか、人恋しさなのか・・・?

 ハリウッド映画なら、それでも最後はハッピーエンドで終わらせたのだろう。しかし是枝監督は、そうはさせなかった。結局、何も解決しないまま「家族を装った6人」は解散する。救われない現実世界と、せめて救いがあってほしいフィクションの世界との中間に放り投げられたまま、席を立つ。

 是枝作品を観るのは、「誰も知らない」(2004)、「そして父になる」(2013)に次いで3本目だった。親に捨てられた子どもたち、新生児取り違えに続き、家族三部作とでも言える作品である。正直、「そして父になる」にはちょっとがっかりしていたので、あまり期待しないで観にいったのだが、ずん、と揺さぶられて帰ってきた。

 映像は美しい。役者さんたちがすばらしすぎる。音楽は細野晴臣、沁みた。

 

*映画を観た後で、本を読んだ。聞き漏らした台詞と見逃した演出が、一本の線でつながって、再び、ぐしゃっと心臓を鷲づかみにされて揺さぶられる。

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(こ)