吉川徹『日本の分断』(光文社新書)

 東京で5歳児が虐待死させられた事件に、心が痛み続けた一日。

 

 前著『学歴分断社会』では、日本社会の分断線を「大卒」と「非大卒」の間に引き、現代日本では両者がほぼ半分ずつ暮らしていて、前者の子どもは前者、後者の子どもは後者として、階層の再生産が本格的に始まったことを明らかにした。
 本書ではそれを一歩進め、大卒、非大卒の2つのグループを、さらに男性/女性、若年/壮年と8類型に区分し、それぞれの集団に固有の生活状況、社会経済環境、意識、ライフサイクルなどを、社会調査データにもとづく計量分析をベースに解き明かしていく。

 他国の先行研究をひもとけば、社会の分断が先鋭化すれば、失業、貧困、離婚結婚の繰り返し、家族崩壊、ネグレクト、銃、麻薬、窃盗、人種排外、ファシズムといった事例が社会に蔓延するという。

 著者は「共生社会」の実現によって、その危機を乗り越えるべきだと訴える。大卒/非大卒、男女、壮若という垣根を乗り越えて、相互理解と交流を進めて分断社会を緩和することによって、新しい社会をつくろうというのである。

 

 天国では、あたたかいかわいい服を着て、おいしいごはんをたくさん食べてね。
 生まれ変わってきたときには、やさしい人たちに囲まれて、元気に大きくなってね。
 守ってあげられなくて、ごめんね。

日本の分断 切り離される非大卒若者(レッグス)たち (光文社新書)

日本の分断 切り離される非大卒若者(レッグス)たち (光文社新書)

 

 (こ)