中澤渉『日本の公教育』(中公新書)

 教育系新書紹介、もう1冊は、中澤渉『日本の公教育』。

 中身については、学術書として出された『なぜ日本の公教育費は少ないのか』(サントリー学芸賞受賞)をベースに新書サイズに整理して書き直したもので、学校教育の外部性や階層研究などの教育社会学のこれまでの研究成果を踏まえながら、現在のデータに合わせて解釈し直すことで、ふわふわした教育論(政策形成過程レベルでもふわふわした議論が声高に叫ばれている)に釘を刺すことに成功している。一部議論の展開に「?」というところもあるが、現状を整理するという観点から、手元において置きたい教育社会学の基本書である。

 ちなみに先週の小針さんと中澤さんは同い年で、北関東の公立高校から慶応・東大とやってきて、最後は同じ研究室に属することになった。歴史研究と計量的研究という方法は違っても、見据えているものは変わらない。日本の教育に対して、証拠をベースとした議論を積み重ねていくということである。中澤さんは認めたくないかもしれないが、結果的に、小針さんと一緒に苅谷剛彦を継ぐものになってしまっているわけである。

日本の公教育 - 学力・コスト・民主主義 (中公新書)
 

 (こ)