小針誠『アクティブラーニング 学校教育の理想と現実』(講談社現代新書)

 本屋大賞、大先生の予想通り、『かがみの孤城』になりましたね!
 さすがです!!

 さて、教育社会学関係でなかなかよい新書が2冊立て続けに出ました。

 ひとつめが、小針誠『アクティブラーニング』。このタイトルの書籍はたいてい、どうやったらアクティブラーニングが実践できるか、というものだったり、アクティブラーニングとはどういうものかという解説書だったりするのですが、これはそうではなく、日本の近代教育史において、学びの方法がどういう変遷をたどってきたかを整理したものとなっています。

 少し読み進めるだけで、なんという「マジックワードの多さだろう・・・」とため息をつかざるを得なくなります。「学校教育の理想と現実」というサブタイトルにあるように、「学校教育の理想」を語るワードが次々と登場し、結局、キラキラ行政文書が踊る一歩で、中身がよくわからないまま、次のキラキラのマジックワードが登場する、という歴史の繰り返しがあったことを、期せずして一気に理解することができます。

 こうした繰り返しは、そもそも戦後教育史の中では「系統主義」と「経験主義」の振り子が定期的に往復しているその延長にあると理解すれば、今回の「アクティブラーニング」も、20年前の「新しい学力観」、そしてその反動としての10年前の「脱ゆとり」に続く流れとして位置づけられるわけで、「アクティブラーニング」的なものは特段新しいわけではないということになります。それでは何が新しいかというと、「アクティブラーニング」という言葉が新しい、ただそれだけで新しいということになるのでしょう。そしてその新しい「アクティブラーニング」なるものに「新しい」という意味を付与するためのロジックがきわめてあいまいで、次々と新しい概念を生み出しては新しい説明をすることで、新しさを強調していく・・・。これは戦後教育政策に一貫した大きな問題なのであって、マジックワードを次々と並べ、実証性のかけらもない因果関係を推定して正当化する・・・。そのような不毛な教育改革が、10年ごとに行われてきたわけで、このようなふわっとした教育方法学と、こうすることで次々と仕事を生み出していく教育学界隈のマッチポンプぶりを、歴史的経緯を踏まえて本書はあぶり出すことになっています。

 ともあれ、新しい学習指導要領は動き始め、それと連動して大学入試改革が待ち受けています。また新たな「教育改革狂想曲」がこの国に鳴り響くのでしょうか。
 そんなことをしているだけの余裕が、今のこの国にあるとはとても思えないのに・・・。 

 (こ)