これはもはや,ジャニーズのアイドルが書いたタレント本ではない。プロの作家が描いた立派なエンターテインメント小説である。加藤シゲアキ『チュベローズで待ってる』。
上下巻からなる作品である。上巻の『AGE 22』では主人公は22歳。就職活動に失敗した主人公がホストの世界に誘われる。この上巻だけでも十分読み応えがある。話は次々と展開し,各章の終わりには必ずといっていいほど変化球が投げられる。もともと週刊誌に連載していたということもあり,「次,どうなるんだろう?」とうまく期待を持たせて話を進める。
下巻の『AGE 32』はその10年後を描く。これは,ちょっと,してやられた。
終盤の意外な展開(というか告白)は,好き嫌いが分かれるだろう。個人的にはチャレンジングなものとして評価したい。伏線もあったし。プロットもトリックも全然違うが,なぜか森博嗣の『すべてがFになる』が思い出された(僕だけかと思ったが,Amazonのレビューでも同じことを書いている人がいた。)。
なお,本作品については,雑誌「ダ・ヴィンチ」に著者のインタビューが掲載されていた。どんなことを考えながら創作したのかを垣間見ることができ,興味深かった。「『チュベローズで待ってる』の中にオマージュがあるとしたら・・・伊藤計劃ですね」という発言があって,なるほどなあ,伊藤計劃かあ,とも。
ところで,この作品にもマキャヴェリ『君主論』が出てくる。やはり,今はそういう時代なのか。
- 作者: 加藤シゲアキ
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2017/12/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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