遠田潤子『オブリヴィオン』(光文社)

本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」堂々の第1位である。遠田潤子『オブリヴィオン』。

絶望と,後悔と,そこから這い上がろうとするほんの少しの希望の物語である。

冒頭から読ませる。刑務所から出所してきた主人公・森二(しんじ)。これを待ち構えていた実兄の光一と,義兄の圭介。短いやり取りと,主人公の独白によって,過去の出来事が示唆される。わずか6ページほどの間に,読者を作品の世界に引きずり込む。

物語のトーンは暗い。一貫して暗い。問題のある家庭環境,また主人公を取り巻く絶望的な状況。それでも,物語は,そして森二の人生は少しずつ前進する。

It is no use crying over spilt milk. このことわざを前に,ある登場人物は言う。「たしかにこぼれた牛乳は取り返しがつかない。でも,新しい牛乳を注ぐことはできる。」。人生,その気になればやり直せる。

読了後も,しばらくは余韻に浸ること,間違いない作品である。

オブリヴィオン

オブリヴィオン

(ひ)

PS 「グレイテスト・ショーマン」いいですよね。僕も先月,公開2日目に見ました。感動のあまり,すぐに映画館からCD屋に直行し,サウンドトラック買いました。どの曲も聴き応えのある曲で,最近は車の運転中にほぼ必ず流しています。