赤神諒『大友二階崩れ』(日本経済新聞出版社)

華々しいデビュー作です。赤神諒『大友二階崩れ』。

九州の戦国大名・大友氏内部のお家騒動「二階崩れの変」を題材に,家臣の吉弘左近鑑理(あきただ)とその弟・右近鑑広(あきひろ)を描いた歴史小説です。

これが,並の戦国小説とは違う。「義」を貫こうとする兄と,「愛」に生きようとする弟。これらの相克と愛情を中心に,人の生き方,生き様というものに迫った作品です。登場人物のキャラクターも一人一人よく練られており,このあたりの造形は新人離れしている感があります。

元のタイトルは『義と愛と』というものだったそうで,個人的にはこの元タイトルの方がしっくり来るような気もします。

作者は1972年,京都市生まれ,法律家。いろいろシンクロしそうではあります。本作で第9回日経小説大賞を受賞し,デビューに至りました。次回作,次々回作にも期待したいところです。

大友二階崩れ

大友二階崩れ

(ひ)