森見登美彦『新釈 走れメロス』(祥伝社文庫・角川文庫)

 大先生のマキャベリに触発されて、塩野七生の『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』が無性によみたくなった(こ)です、こんにちは。今回は前回の続きで、現地で読むといいよねシリーズにしようかと。

 京都を舞台にした小説はたくさんあるけれど、やっぱり森見登美彦だろうなぁ。はじめて手にした森見本は『太陽の塔』だったけど、北白川別当町の角の喫茶店がどうのこうのと出てきたときには、そこ行きますかと思わずのけぞったものだっけ。そういえばこのあいだ、ほんとうに『有頂天家族』の下鴨一家叡山電車に乗り込んできたらしく、ツイッターなんかでちょっとした話題になったりしていた。

 さて、『新釈 走れメロス』では、京都の街をペンで荒らした上に、原作を徹底的にいじり倒す。まさに森見ワールドの真骨頂といったところか。山月記では大文字山のほこらの屋根に登ってつばを吐き、走れメロスでは意味もなく西へ東へ走り回る。その底にある、京都への愛と原作への敬意があふれ出てきて、にやりとして、くすっとして、ほわっと胸があたたかくなる。

 もうひとつお気に入りがあるんだけど、それは季節限定モノなので、またそのときに。

新釈 走れメロス 他四篇 (祥伝社文庫 も 10-1)

新釈 走れメロス 他四篇 (祥伝社文庫 も 10-1)

 

(こ)