マキャヴェリ『君主論』(森川辰文訳,光文社古典新訳文庫)

ちょっとした『君主論』ブームである。マキャヴェリブームといってもいいかもしれない。

ここ数か月の間に,相次いで新訳が刊行された。光文社古典新訳文庫版と,中公文庫版である。その少し前にはウェッジ版というのも出たらしい。今は,そういう時代なのか。

昔,岩波文庫版で読んだことがあり,これは今でも本棚に残してあるのだが,今回,「読みやすい新訳」ということで,新たに光文社古典新訳文庫版を買って読んでみた。

・・・う~ん,やっぱりマキャヴェリストだねえ。当たり前か。

とにかく徹底したリアリズムである。背景にあるのは,権謀術数の社会であり,強い者のみが生き残るという世界である。当時のイタリアの政治状況からすれば,まあそうならざるを得ないのだろうが。

ところで,今回読んでみて思い起こされたのが,塩野七生ローマ人の物語』。この大長編が,マキャヴェリの思想というか,ものの見方というものを,ローマの興亡に当てはめて読み解いてみた作品に見えてきたんだけれども,どうかな。

君主論 (古典新訳文庫)

君主論 (古典新訳文庫)

(ひ)