今週いちばんおもしろかったのが、この本。
佐藤優『ファシズムの正体』(インターナショナル新書)の中でたびたび引用されていたので、買ってみた。
まぁ、目からウロコとはこのことか。
「なぜあの戦争に突入したのか?」「なぜあんな無謀な精神主義がまかり通ったのか?」というのは、日本の近現代史を考える上では避けては通れないことなのだが、本書はそのターニングポイントを(よくあるような日露戦争ではなく)「第1次世界大戦」に置く。
第1次世界大戦は総力戦であり、幸いにして局外に置かれた日本も来たるべき戦争に向けて対策を取らなければいけなくなった。しかし「持たざる国」日本は、どう逆立ちしても「持てる国」には総力戦では及ばない。そこで「持てる国」となるために大陸をめざし、足りない部分を「精神」で補おうとした、というところがベースとなる。
さらにポイントとなるのは、実は大日本帝国憲法は、まったくもって分権的(!)な統治機構を備えており、そのために総力戦完遂のための独裁が成立しなかったという点(だから東条英機はいくつもの役職を兼任したのだが、それがかえって東条批判のもととなった)。つまり、日本ではもともとファシズムは成り立ち得なかったというのである。
一緒に、『クーデターの技術』(中公選書)も買った。イタリア・ファシスト党のメンバーだったクルツィオ・マラパルテによって1931年に書かれており、台頭著しいヒトラーをコケ下ろす部分もあって、なかなかおもしろい。
日独伊、「枢軸国=ファシズム国家」としてひとくくりにされることも少なくないが、まさに三者三様だったのである。
それにしても、『未完のなんとか』ってタイトルの本、多いよなぁ。
(こ)