綿矢りさ『勝手にふるえてろ』(文春文庫)

映画を見に行った。大九明子(おおくあきこ)脚本・監督,松岡茉優主演の『勝手にふるえてろ』。いわゆるミニシアター系の映画である。

これが面白かった。単なるコメディ映画かと思いきや,もう少し深く,孤独とか,現実とか,ディスコミュニケーションとかがうまく描かれている。あっ,あるある,なんて思ったりもする。この前の東京国際映画祭のコンペ部門に出品され,観客賞を受賞したというのも,分かる気がする。

この映画の原作は,綿矢りさの同名の作品である。

昔一読していたのだが,映画鑑賞後,本棚から取り出して読み直してみた。最近の作品に比べると文章がやや硬い感じもするものの(最近の作品は読みやすい),綿矢りさのキーワードである「妄想」と「暴走」が程よくミックスされ,軽く読むにはちょうどよい作品といえよう。

綿矢りさは,一時は全く作品を発表することができないほどの大スランプに陥っていたが,本作品で復活し,文壇に舞い戻ってきた。初期作品(『インストール』,『蹴りたい背中』)も良いのだけれど,個人的には,スランプ後の方が肩の力が抜けて良くなったと思う。

なお,この後に書かれた『かわいそうだね?』(文春文庫)も面白い。関西人にはむしろこちらの方がおすすめかもしれない。

勝手にふるえてろ (文春文庫)

勝手にふるえてろ (文春文庫)


かわいそうだね? (文春文庫)

かわいそうだね? (文春文庫)

(ひ)