澤田瞳子『火定(かじょう)』(PHP研究所)

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年始めの1本目は,こちらの本を紹介したい。澤田瞳子『火定(かじょう)』。

パンデミックを題材とした小説である。といっても,現代や近未来が舞台というわけではない。舞台は今から1200年以上も前の天平時代。裳瘡(天然痘)による平城京の大混乱を描いた,歴史小説である。

次々と感染する疫病。手段も方法も分からないまま,必死に立ち向かう施薬院の官人ら。混乱に乗じて偽神を広める者。そして,暴徒と化す群衆・・・。

単なるパニック小説ではない。死とは何か。生きるとは何か。登場人物らはもがき苦しみながらも,天然痘に,そして人生の意味に正面から挑んでいく。

第158回直木賞最終候補作である。当然のノミネートといってよいかもしれない。

火定

火定

(ひ)