原田マハ『たゆたえども沈まず』(幻冬舎)

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若いころはモネやルノワールの絵に惹かれた。柔らかな光,鮮やかな色。それに比べ,セザンヌゴッホは,どうもね,という気がしていた。

最近は違う。セザンヌゴッホに惹かれる。この絵はすごい。というか,このエネルギーはすごい。未来への扉を指し示したのがモネやルノワールだとすれば,その扉を実力でこじ開けたのはセザンヌゴッホだろう。

原田マハ『たゆたえども沈まず』は,ゴッホをテーマにした小説である。孤高の画家のありのままの姿が,弟テオと,そして加納重吉という日本人の目を通して描かれる。苦悩,焦り,失意。芸術家のそういった思いが,油絵の具の香りとともに,本からにじみ出てくるようである。

この小説に彩りを添えているのが,日本の浮世絵。この異国の文化に影響を受け,ゴッホの,そして弟テオの人生は大きく流転する。

読後,改めて美術館にでも行ってみようかと思わせる一冊である。

たゆたえども沈まず

たゆたえども沈まず

(ひ)