池上永一「ヒストリア」(角川書店)

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「誰か戦争を止めて」。本の帯に書かれた台詞が,この作品の大きなテーマとなっています。池上永一の「ヒストリア」。

沖縄に住む女性の「知花煉」は,太平洋戦争末期の沖縄戦で熾烈な爆撃に遭い,家族すべてを失います。戦後,煉は南米ボリビアに移住しますが,そこでも波瀾万丈の人生が・・・。

この物語を支えているのは,第一に主人公の強烈な個性です。とにかく強く,活動的で,バイタリティにあふれています。それに加えて,主人公の身体から離れた「魂(マブイ)」が,もう一人の主人公として存在し,活動するということ。これが,この物語にさらに奥行きを与え,エンターテイメント性の高い作品に仕上げています。そして,何よりもまず,物語を通してここかしこに織り込まれている,様々な哲学的・政治的メッセージ。全629ページ,最後の一行まで目が離せない作品となっています。

普通の本好きの人にはもちろん,「今まで読んだことのないような小説を読みたい」という人にも,ものすごくお勧めしたくなる一冊です。

ヒストリア

ヒストリア

(ひ)