2023年の114冊(通算563~676)

勅使川原真衣『「能力」の生きづらさをほぐす』(どく社)『正訳 紫式部日記』(中野幸一訳・勉誠出版)山本文緒『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』(新潮社)福間良明『司馬遼太郎の時代』(中公新書)アルテイシア『59番目のプロポーズ キャリ…

角田光代訳『源氏物語 下』(河出書房新社)

先生ご指摘のとおり、今年の大トリは角田光代訳『源氏物語 下』。光源氏亡き後の物語。 「匂宮」「紅梅」「竹河」のいわゆる匂宮三帖を経た後(いずれも断片的な話)、いよいよ最後の山である宇治十帖に突入する。 この宇治十帖、角田光代訳で約500頁もあ…

本郷和人『「将軍」の日本史』(中公新書ラクレ)

大先生による大トリは、きっとあの日本文学史上最高傑作がくるだろうと思っていて、もうそれが待ち遠しくてしかたないのですが、私の方は、大河「光る君へ」につなぐためにも、2年連続の将軍ものだったので、「将軍」で締めようかと。 といいつつも、大先生…

万城目 学『八月の御所グラウンド』(文藝春秋)

角田光代訳『源氏物語』、全部読んだぞー! --- 源氏物語を読みふけっている間、直木賞候補作の発表があった。なんと万城目学さんが6回目の候補入り。9年ぶりとのこと。これは読まねば。 『八月の御所グラウンド』。2作の短中編からなる本である。 1作目…

『学習まんが日本の歴史 試験に役立つ!超重要人物101』(集英社)

「学習まんが日本の歴史」は、小学館・学研・集英社・角川がしのぎを削っており、それぞれに長所があって、なかなか選びづらい。各社の改訂が一巡して、学説も更新され、何よりも絵が劇画調になっていたりするので、さらに悩む。で結局、メルカリで売られて…

福澤諭吉『現代語訳 文明論之概略』(伊藤正雄訳・慶應慶応義塾大学出版会)

当ブログで紹介した宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』ですが、なんと雑誌「ダ・ヴィンチ」のBOOk OF THE YEARにおいて小説部門1位に輝きました!おめでとうございます!デビュー作で1位・・・。 ---ずっと角田光代訳『源氏物語』を読み続けているため、…

有賀健『京都 未完の産業都市のゆくえ』(新潮選書)

ゴジラ-1.0、観ました。圧倒的によかったです!! 1954年のゴジラでは観客にとって当たり前だった「あの戦争体験」を強調して描いたのは、時代の要請として正解だったと思う。神木浜辺ペアも朝ドラに続いて(撮影はこちらの方が早かったらしいけど)安定の演…

佐野大介『孟子』(角川ソフィア文庫)

当ブログで紹介した前田雅之『古典と日本人』に、四書(論語・大学・中庸・孟子)のうち読み残していた「孟子」をようやく読み終えたとする明治初期の一庶民の記録が紹介されている(248頁)。 僕も「論語」「大学」「中庸」までは訳注付きで読んでいたし…

眞邊明人『もしも彼女が関ヶ原を戦ったら』(サンマーク出版)

前作「もしも徳川家康が総理大臣になったら」はコミカライズもされて映画化までされるそうだが、その続編。前回はコロナの難局を乗り切るためにAIで偉人たちを召喚して内閣を組織した話だが、今回は逆に、メタバースを使ってゲーム企業の「彼女」(みやび…

角田光代訳『源氏物語 中』(河出書房新社)

角田光代訳の源氏物語の中巻である。 まずは「玉鬘」から「真木柱」までの、いわゆる玉鬘十帖。夕顔と頭中将との間の娘・玉鬘を中心とした、外伝的要素のある物語である。ここでは光源氏は、親切だけどちょっと面倒くさいおじさんのようである。最後はやや意…

ダニエル・ソカッチ『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』(NHK出版)

2023年は、1973年の第4次中東戦争とオイルショックから50年、歴史的な「オスロ合意」から30年という節目の年である。その10月、50年前と同じ「贖罪の日」にガザからハマスがイスラエルに侵入し、戦火の口火が切られて、今もイスラエル軍の侵攻は続いている。…

レヴィ=ストロース『悲しき熱帯 I・II』(川田順造訳・中公クラシックス)

ずっと角田光代訳『源氏物語』を読み続けているため、読み終えた本というものがない。そこで今回は「今まで読んだ中で特に印象に残ってる本」を紹介したい。 クロード・レヴィ=ストロース。文化人類学者であり、構造主義の祖でもある。その彼がアマゾン川流…

逢坂冬馬『歌われなかった海賊へ』(早川書房)

舞台は1944年のドイツというから、セラフィマたちが東部戦線を押し戻しているころのことだ。ヒトラーとヒムラーを批判したという密告によって父を処刑されたヴェルナーは、敵討ちをしようとしたところをエルフリーデによって止められる。ナチスのもとですべ…

角田光代訳『源氏物語 上』(河出書房新社)

角田光代訳の源氏物語を読んでいる。 きっかけは先月から始まった文庫本化。全8冊を月1冊ペースで順次刊行していくという。試しに読んでみたところ、思いのほか読みやすかったので、この際、刊行済みの単行本で読んでいくことに。 全3巻。これまでたびた…

高橋雅紀『分水嶺の謎』(技術評論社)

兵庫県に、標高100mもない日本でいちばん低い中央分水嶺(分水界)があるのは有名な話。こうした谷中(こくちゅう)分水界はけっこうたくさんあるらしい。昔は川だったところが隆起や河川の浸食によって流れが変わって、あるとき反対側に流れていってしまっ…

山崎貴『小説版 ゴジラ-1.0』(集英社オレンジ文庫)

「シン・ゴジラ」を映画館で見たとき、その内容に圧倒され、もうこれ以上のゴジラ映画は作れないんじゃないかと本気で思った。 そうしたところ、山崎貴監督が果敢にも手を挙げ、新作が世に出ることになった。「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」である。 期待半…

ロブ・デサール/イアン・タッターソル『ビールの自然誌』(勁草書房)

大先生の守備範囲は、相変わらず広いですね~~ 「人と獣とを分かつ大きな特徴は2つ、未来に対する恐怖と発酵した酒への希求」なんだとか。 私、あまたあるお酒の中でもビールが大好きなのです。身体も心も元気にしてくれる、黄金色の魔法の水。 そのビール…

秋のコミック6選+2

当ブログで何回も紹介してきた「推しの子」ですが、アニメ版主題歌のYOASOBI「アイドル」とともに新語・流行語大賞ノミネート入り!いや~、流行しましたね~。 車田正美(原作)・須田綱鑑(漫画)『聖闘士星矢 海皇再起 RERISE OF POSEIDON』(チャンピオ…

竹田ダニエル『#Z世代的価値観』(講談社)

竹田ダニエルという初めて名前を聞く人の『世界と私のAtoZ』という表紙がやけに目立つ本が出版されたのが去年の今頃だった。書評も出ていたので、版を重ねていったので、どんなものかと取り寄せてみた。正直いうと、聞いたことのないアメリカの音楽や映画や…

岡崎琢磨『鏡の国』(PHP研究所)

これもよく見かけるので、どんなのかなと思って読んでみた。岡崎琢磨『鏡の国』。 亡き大御所ミステリー作家・室見響子の姪である「私」。遺稿となる私小説『鏡の国』を前に、担当編集者はこう言った。「『鏡の国』には、削除されたエピソードがあると思いま…

清田隆之『よかれと思ってやったのに 男たちの「失敗学」入門』(双葉文庫)

男性から女性への失言というかセクハラとか、そういうのは、昭和のオヤジがやるものだと思っていたけれど、そうじゃない。 著者は企画で1000人以上の女性から「恋バナ」を聞いていくうちに、実は男たちヤバいんじゃね?、と気づいてしまう。 話を聞かない、…

平田陽一郎『隋-「流星王朝」の光芒』(中公新書)

映画「キリエのうた」(岩井俊二監督)を見に行った。どこを切り取っても「絵」になる研ぎ澄まされた映像美と、心震わせるストーリー。キャストの中では松村北斗が秀逸。広瀬すずもクセのある役をうまく演じていた。 ところで原作小説の表紙、抽象画か何かだ…

カレン・チャン(古屋美登里訳)『わたしの香港 消滅の瀬戸際で』(亜紀書房)

植民地香港が中国に返還されたのが1997年。一国二制度を標榜し、50年間は現体制が維持されるはずであったが、2014年の「雨傘運動」、2019~20年のデモを経て、香港国家安全維持法のもとでデモは制圧され、香港は大陸に吸収された。 著者は1993年香港生まれ。…

井上真偽『アリアドネの声』(幻冬舎)

広告でよく見かけるので、どんなのかなと思って読んでみた。井上真偽『アリアドネの声』。 ドローン関係のベンチャー企業に務めるハルオ。仕事先で地震に遭遇し、そこで「見えない・聞こえない・話せない」女性が地下に閉じ込められていることを知る。ハルオ…

ジェフリー・ロバーツ(松島芳彦訳)『スターリンの図書室』(白水社)

ハルバースタム、不世出のジャーナリストですよね。 モスクワ郊外のスターリンの別荘には、2万5千冊の蔵書を収蔵した図書室があり、彼は時間をみつけてはそこで過ごした。司書がいてスターリンの指示に従って分類し、ジャンルを問わず、片っ端からめぼしい本…

デイヴィッド・ハルバースタム『ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(下)』(山田耕介ほか訳・文藝春秋)

勢いに任せて下巻まで読み通した。デイヴィッド・ハルバースタム『ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(下)』。 仁川上陸作戦の大成功に気を良くしたマッカーサーは、なんと中朝国境の鴨緑江まで米軍を進めさせるよう命じる。 極寒の朝鮮半島北部におけ…

池波正太郎『武士(おとこ)の紋章』(新潮文庫)

NHK朝ドラ「らんまん」が終わった。恥ずかしながら牧野富太郎という人を初めて知った。彼のことを池波正太郎が書いていると聞いて、手にしてみた。 そのエッセイは、8人の男達の生き様を描いた短編集の中に収められていて、黒田如水、真田信幸・幸村兄弟、堀…

デイヴィッド・ハルバースタム『ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(上)』(山田耕介ほか訳・文藝春秋)

伊坂幸太郎『777 トリプルセブン』、実は僕も読みました。最初から最後まで、ずーっと面白かった!今、刊行記念グッズのオリジナルTシャツを買うかどうか思案中。 --- 一度読みたいと思っていたが、なかなか手を出せずにいた。今回、ちょっと時間が取れ…

伊坂幸太郎『777(トリプルセブン)』(角川書店)

はじめて伊坂幸太郎という作家に出会ったのは、書店でたまたま手にした祥伝社の新書版『陽気なギャングが地球を回す』だった。一癖も二癖もある登場人物たちが、めまぐるしく切り替わる場面の中で、淡々と気の利いた会話を続けながら、クライマックスへと突…

湯之上 隆『半導体有事』(文春新書)

以前紹介した『葬送のフリーレン』がアニメ化! しかも… ・初回は「金曜ロードショー」で2時間スペシャル(史上初)!・音楽はEvan Call(鎌倉殿の13人)!・オープニングテーマはYOASOBI! エンディングテーマはmilet! ……絶対にヒット作にするぞという…